知らなかったでは済まされない!タイの大麻・薬物事情
タイでは2019年2月に医療目的の大麻使用が合法化されました。日本でも大きく報道されたのでご存知の方も多いと思いますが、大麻が完全に合法になったと勘違いしている方も多い印象です。
また2021年8月には日本で指定薬物であるクラトムの葉も合法化され、タイは薬物に対する規制が緩いイメージがあるかも知れませんが、そんなことはありません。
そこで今回は、タイを訪れる上で知っておくべきタイの大麻・薬物事情についてお話します。
タイでの大麻、麻薬に関する規制
タイでは大麻や麻薬などの薬物については、麻薬法で定められています。麻薬法では第1〜5類まで薬物の種類によってカテゴリー分けをされていて、主な麻薬は以下のとおり分類されています。
第1類:39種の危険な麻薬(ヘロイン,メタンフェタミン,MDMA,LSD等)
第2類;102種の通常の麻薬(コカイン,ケシ濃縮液,メタドン,モルヒネ,あへん等)
第5類:第1類から第4類までに含まれない3種の麻薬(大麻、ケシ、マジック・マッシュルーム)
クラトムに関しては2021年8月24日に第5類から除外され、栽培や所持、使用、売買が完全合法になりました。
第1〜5類のカテゴリーごとに刑罰は異なりますが、もし販売目的で所持していた場合、殺人罪よりも厳しい罰則(死刑、終身刑、懲役50年など)が科されます。
タイの薬物に関する罰則について詳しく知りたい方は、クラトムや医療大麻が合法化される前の古い資料にはなりますが、下記法務省の資料(PDF)「第5章 タイ 」をご確認ください。
参考資料:第5章 タイ - 法務省
合法化された大麻の範囲
大麻は麻薬法指定薬物の第5類に属していますが、クラトムのように完全合法になったわけではありません。では何が合法化されたかというと、大麻(カンナビス及びヘンプ)の葉・茎・幹・根が第5類から除外され、医療、医薬品、健康食品及び化粧品等の商業利用が可能となりました。花および種子は引き続き第5類に属し、禁止指定されています。
分かりにくいかもしれませんが、「花および種子」以外は合法化され、「花および種子」は引き続き麻薬指定されているということです。
花および種子には酩酊成分であるTHCが多量に含まれていて、それ以外の部位には微量しか含まれていません。葉や茎といった花および種子以外の部位は、よほど大量に摂取しない限り酩酊する可能性は低いため合法化されましたが、一般的にドラッグとして使われている花および種子については、今後も厳しく取り締まっていくというわけです。
タイでは街の至るところで大麻マークが入った食品や飲料が売られていますが、これらはTHCがほとんど含まれていないため、酩酊する心配はありません。
日本でも大麻の有効成分の1つであるCBDは合法ですよね。CBDを摂取したことがある人も多いと思いますが、タイの大麻食品や飲料に含まれている成分もCBDです。日本でCBD入りの食品を食べるのとなんら変わりはありません。
それではなぜタイで医療大麻が合法化されたことがこれほど話題になったのでしょうか。その理由は医療目的であれば、花および種子から採取されたTHCを含む医薬品が使用できるようになったからです。
タイにはTHCを含む大麻由来の医薬品を処方する病院やクリニックが数十件あります。僕はそのうち3件の医療機関に取材をしたことがありますが、外国人でも治療を受けることができるため、日本から医療大麻を目的に来院する人も多いようです。
大麻がどんな治療に役立つかについてはここでは書きませんので、医療大麻について詳しく知りたい方はご自身でお調べ下さい。
医療大麻で注意してほしいこと
タイの医療大麻は、認可を受けた医療機関で、専門のライセンスを持つ医師のみが処方できます。医療大麻のライセンスを持たずにTHC入りのオイルなどを処方しているクリニックもあるので注意が必要です。
またインターネットでもTHCオイルを販売しているショップがありますが、これも完全に違法です。そもそもタイでは医薬品のオンライン販売は禁止されています。
タイは医療大麻が合法化されたといっても、どこでも購入・所持していいものではなく、認可を受けた医療機関で処方された医療大麻のみ合法です。
歓楽街やビーチリゾートで売人に声をかけられ、「タイは大麻が合法化されたんだ。捕まらないよ」とか、「医療大麻だから合法だよ」と、大麻の購入を勧められたとしても、絶対にその誘いには乗らないようにしてください。
今後、観光客がタイに戻ってくるようになると、勘違いして逮捕されるケースが増えるのではと危惧しています。また、タイで合法的に入手したTHCを含む医療大麻をうっかり日本に持ち込んで逮捕されるケースも出てきそうです。
日本人が巻き込まれる薬物犯罪
在タイ日本国大使館から定期的に配信される海外安全情報のメールでは、薬物で逮捕された日本人の事案が年に何度も確認できます。
タイだから大丈夫だろうと安易な気持ちで薬物を所持・使用することはもってのほかですが、中には警察とグルになったタクシーや水商売の女性に薬物を仕込まれて逮捕される事例も少なくありません。
一夜を共にした女性に薬物を仕込まれるのは防ぎようがないかもしれませんが、タクシーについては対策があります。
タクシーで薬物を仕込まれるケースは、主に歓楽街やクラブ(踊る方)の前に待機しているタクシーを拾った場合がほとんど。走り出してしばらくするとパトカーに止められ、所持品検査で薬物が出てくるというパターンです。
歓楽街やクラブの前に待機しているタクシーには絶対乗らず、少し離れた場所から流しのタクシーを拾うかGRABを使うようにしましょう。
まとめ
以上、タイの大麻・薬物事情についてお話をさせていただきました。
僕は医療大麻賛成派ですが、合法化された範囲を知らず、大麻の所持・使用で逮捕される日本人が増えないか心配しています。
タイの大麻に関する法律は今後も緩和していく方向だと思いますが、2021年11月時点では完全に合法化されているわけではありません。
知らなかったでは済まされませんので、タイで医療大麻の治療を受けてみたいと考えている方は、事前に最新の法規制を確認するようにしてください。
明石直哉
2011年からバンコク在住。2015年に起業し、現在は会社経営と写真家という二足のわらじで活動中です。 このブログではタイ移住を検討している方に向けて、在住10年の経験を活かした情報を発信していきます。
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